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5.外国との比較6.建築工事における左官の必要性7.環境・健康と左官⑴ 土などの自然素材図5 「源氏物語絵巻」の漆喰絵図6 「牛若丸と弁慶」の立体像 石工(イシク)組合に代表される欧州地域の石材によるものづくり,先述のコロセッウムなどの土コンクリートや丸太を使った建築物,インドの「牛糞文化」といわれた牛糞による住宅づくり,簡単な動物の皮を使ったパオ,それぞれの地域から入手できる材料と施工法,その地域に合った生活環境に即した建物づくりが行われてきた。これら欧米の住宅の寿命は150年といわれている。これに比べわが国の最近の住宅は平均寿命25年といわれ,全国的なアンケートにおいても,築後20年のリフォーム開始が最も多いというデータが出ている。 日本では,気候に合った木造建築があり数百年の歴史を刻んでいる。東寺の五重の塔は釘一本使われていないし,先の西本願寺の「御影堂」の改修は400年振りである。この間,これらの建物は幾多の地震や火災に逢いながらも原型を止めていることは,木造既存建築の強さを証明した。 このように,先人たちは知恵を絞り手近にあるものでそれぞれの国の気候に合わせて耐久性のあるものづくりをしてきたことに感心させられる。 左官は,床・壁・天井のどこでも継ぎ目なしで塗れ,どのような形でも作業できる材料であり技術で,建築の中で唯一の職種である。展伸性があり湿式ならではのものづくりの特性である。 建築では,どうしても収まらない死角というものがあり変形,円形,大小に係らず半端な寸法の仕上げには展伸性のある材料でしかできない部分が必ずあるもので,建築には左官が欠かせない。 また,蔵飾りでも見られる絵画性,彫塑性もありフレスコや高松塚古墳の漆喰絵などが良く知られている。左官では伊豆・松崎町の「伊豆の長八」がありあまりにも有名である。 京都では,左官仕事の範囲をユーザに周知するため1年に一度開催される「ものづくりフエア」にお4/2010いて左官のパフォーマンスを行っている。図5は,平成20年度制作の「源氏物語絵巻」の漆喰絵。図6は,平成21年度制作の「牛若丸と弁慶」の立体像で漆喰によって色付けした。 左官の塗り壁の材料は,自然素材であることを述べてきた。その材料には,それぞれの個性と性能を有する。 土の持つ特性や強さについてすでに紹介しているが,壁にすると抜群の「調湿性」を持ち自ら呼吸することから「結露」を防ぎ,健康的で潤いのある住環境が得られる。また,材料としての素材の製造か17

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