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5.鍛練された若年者の技能5.1 ねじの位相合わせ部品③部品④図13 部品図⑤図15 ねじの位相合わせ4/20105.2 芯出し図14 完成部品D状態の組立て精度,部品⑤と③,⑤と④,④と③のねじの勘合などがあげられる。 組立図AからBの状態,組立図CからDの状態へ部品⑤を回して摺動されるためには,部品③と④のM52×2のねじの位相が合わなければならない。競技は,組立状態で測定や心出しは行ってもよいが,切屑の出る作業は行ってはならない。 多くの選手に見られた加工方法は,先に仕上げた部品③または④のねじを基準として,ねじ切りバイトの位相合わせをシックネステープを介して傷が入らないように目とハンドルを回すわずかな負荷を感じ倣いとっている。更に仕上げ間近になると,基準部品を組み付け,位相のわずかな「ずれ」をてこ式ダイヤルゲージで測定し,複式刃物台送りの微調整を行う。 ねじを仕上げた後に位相の誤差が確認された場合は厄介である。部品⑤が部品③から部品④へ摺動しない場合は,部品③のねじのギャップを増やすか,端面追い込み量を求め位相を合わすなどの処置に迫られる。 技能五輪において優勝を争うレベルでは,ねじの勘合や仕上げは重要な評価項目となる。旋盤の親ねじの摩耗やハーフナットの噛みつき具合も影響する。選手の中には,5kgほどの重りをハンドルにぶら下げハーフナットの噛みつきを確実にしている。また,ねじ切りの仕上げは,チャック外周を手で回し手動で行っている。これにより,ねじの“びびり”を押さえ光沢のあるねじ面を仕上げる。 芯出しは,旋盤加工において最も基本的な作業であるが,その正確さ,速さ,状況に応じた加減など鍛錬された技能を要する。技能検定2級程度であれば,幾度か練習すれば1回の芯出しが5分以内で合わせられるようになる。試験時間の上でも特に問題はない。しかし技能五輪では,部品⑤のように薄肉形状が多くチャック力を抑えなければ変形し加工精度に影響する。また芯出しの種類と精度の要求が高く,120°の偏芯(第46回課題)や軸直角穴位置(第45回課題)の芯出し作業が必要である。 120°芯出しは,爪1から4番の位置で,芯高に調整されたダイヤルゲージで振れを正確に読み取り,あらかじめ計算された値に合わせていく。 軸直角穴や平面加工では,直角度が必要となり,旋盤の円筒加工精度に加え,主軸上下の水平度が影響する。このため選手は,試し削りの際に精度確認をミクロンオーダーで行う。誤差が確認された場合は,旋盤のレベルを調整し対処する。選手や指導員は納得するまで機械の調整を行う。13

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