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3.POCEが一貫しない訓練計画の例4.POCEが一貫した訓練計画3.1 POCEの明確化3.2 POCEの一貫性の確認表2 小屋組セミナーのPOCE一覧目  的問  題:小屋組施工の際,必要部材の墨付加工ができないと,施工を任されても1人で作業できない。現  状:小屋組の墨付加工ができない。修了者像:必要部材の墨付加工ができること。目  標隅木,桁,垂木,鼻隠し,振れ垂木の墨付加工ができる。指導項目・小屋組の各種工法・課題の提示・規矩術を使った部材の墨付・現寸図を使った部材の墨付・手工具を使った加工・組立・成果の確認評  価技能検定1級課題の作成22① 目的―目標② 目標―指導項目③ 指導項目―評価④ 目標―評価⑤ 目的―指導項目⑥ 目的―評価 私が実施した小屋組セミナーは,反省すべき結果となった。このコースは,雇用・能力開発機構のカリキュラムモデル「隅木・振垂木の加工・組立の実践技術」18時間のコースである。カリキュラムを明確にするため,POCEを表2のように設定した。 このセミナーは終了時の受講者アンケートで,受講生の満足を得られなかった。その理由を検討すると,POCEの一貫性が崩れていたことに気づいた。表2に示すPOCE6組の一貫性確認と,その判断理由を以下に示す。① 目的―目標:一貫しない 目的の問題の欄に「1人で作業できない」とあるが,目標の欄には「1人で」という条件を設定していない。このため訓練終了時に指導員が受講生をみて「できるようになった」と評価するレベルと,受講生が自分で「できるようになった」と満足するレベルに違いが生じてしまった。② 目標―指導項目:一貫する 目標達成に必要な指導項目をすべて明示している。③ 指導項目―評価:一貫する 指導項目と技能検定課題に必要な項目が一致する。④ 目標―評価:一貫する 目標で設定した加工部材が技能検定課題の加工部材と一致する。⑤ 目的―指導項目:一貫しない 設定した目的の欄では明確化できていないが,このセミナーを実施するに至った本来の目的は「現場作業ができるようになる」ことである。現場作業ができるためには,必要な指導項目が不足する。例えば実施したセミナーでは部材の加工寸法を指導員が提示したが,現場作業では作業者自ら導き出さなければならない。⑥ 目的―評価:一貫しない 目的である現場作業で必要な能力と,評価で設定した技能検定課題の評価する能力が異なる。現場作業で必要な能力は,加工寸法の立案や電動工具の効率的な使用である。他方,技能検定作業が評価する能力は,手加工による高度な加工精度や速度である。 以上を整理すると,目的と目標が一貫しなかったため,目標以下の指導項目・評価が目的から外れた内容になってしまったのだ。受講生は「現場作業ができるようになる」意気込みでセミナーを受講したが,セミナー終了時に身についた能力は技能検定課題を作れるようになっただけで,現場作業ができる自信を持てなかった。受講生がセミナーに対し不満を感じたのは,このことが原因と考えられる。 以上のようにPOCE6組の一貫性を確認すると,目的と目標・指導項目・評価の一貫性が崩れていた。目的との一貫性が崩れたのは,次の3点が原因だと考えられた。① 目的が曖昧で一貫性の判断が難しい。技能と技術

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