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5.おわりに<参考文献>⑶ 企業に対するキャリア形成支援の提言20問題に広く対応できる力を持つことが望まれる。また,企業の生産現場に出かけて,その現場の問題を芋蔓式に掘り起こして改善の手掛かりを社員に提示するとともに,社員に生産現場の問題を発見させ,自ら改善に取り組む仕組みを定着させることができる,現場に強い指導員になってこそ企業の社員の高度で専門的な技能・技術の形成に資することになろう。 ① 職場の中に社員の理想像となる高度で専門的な技能者を認定する認定要件を設け,そのポジションに到達するキャリアルートを明示して技能・技術の伸長を促すとともに,該当する高度で専門的な技能者を職場ごとに配置して他の社員の模倣の対象とすることが必要であろう。 ② 職場のものづくりと関連する興味や意欲といったキャリア志向を高く有する人材の発掘を入社選考の1つの基準に加えることが高度で専門的な技能・技術が定着する素地をもつ人材を選考することになろう。 ③ 技術的に関連の深い範囲内で職場のさまざまな仕事を順次定期・非定期にローテーションすることが技能・技術の形成に有効かつ不可欠であろう。 ④ 職場の内外にかかわらず,社員が自身で解決できない問題が生じたときにその解答を求められる仕組みを整備することが望まれる。例えば社員個々人が職場で直面した問題を短く記録して,取った対策とその結果のデータを整備し1)平成20年度ものづくり基盤技術の振興施策  第171回国会(常会)提出(2008)2)小池和男:『日本企業の人材形成』,中公新書,(1997)3)東清和・安達智子:『大学生の職業意識の発達』,学文社,(2003)4)村上信夫:『帝国ホテル厨房物語』,日経ビジネス文庫,(2004)て,職場の会合で討議することも有効であろう。 ⑤ 研修先やテーマの選定に当たっては,どのようなコースが現在その社員に必要かはしばしば社員自身でなければわからない場合が多い。上司は研修の実施に当たっては当該社員と十分協議のうえで参加するコース等を選定することが必要であろう。 ⑥ 自社製品・製造過程の理解と技術的成長の2つの変数間には正のサイクルが回っており,また,技術的成長と会社・仕事に対する満足の2つの変数間にも正のサイクルが回っていることから,この関係を重視していずれの要因からもアプローチして正のサイクルを回すことが社員の高度で専門的な技能・技術の形成に繋がり,ひいては企業の付加価値の向上や,生産性の向上に資することになろう。 今回の提言が公共職業能力開発施設や企業において高度で専門的な技能・技術の維持・継承を効果的に進め,ものづくり分野の現場において中核となる人材の育成に資する一助になれば幸いである。技能と技術

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