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る。社寺仏閣,土蔵,城郭,土塀,住宅を含む建築物すべてに網羅している。また,その耐用年数は,京都そのものが証明している。先ほど改修された西本願寺は,400年ぶりのもので風雨や大きな地震にも耐えた証ともなっている。 漆喰はまた,人間の生命そのものに貢献していることが判明した。漆喰の材料の石灰(消石灰)の性能に二酸化炭素を吸収する性質があり,低炭素化を図り地球温暖化に貢献するもの。また,漆喰の抗菌性(ウイルスの不活性化率99.998%)があり,漆喰の壁を多く塗ることにより新インフルエンザ対策に貢献できるとしている。〔パラリ壁〕 漆喰壁の一種だが,壁表面の仕上げが異なる。漆喰の材料に小さな石灰隗を混入して塗ると表面に粒々が出て優雅な仕上げとなる。御所や桂離宮の壁で有名である。〔その他の仕上げ〕・モルタル塗り 金鏝押さえ,刷毛引き・色モルタル塗り 刷毛引き,掻き落し・人造石洗い出し・吹付け仕上げ・石膏仕上げ 壁,天井,梁などで施工 特に,シャンデリヤ廻りの飾り天井や隅飾りの蛇腹仕上げは,左官ならではの芸術となっている。・版築(たたき)工法=土コンクリート 古代からの工法で,現在でも多く施工されている。ヨーロッパ各地の遺跡やアンコールワットで余りにも有名である。 わが国でも「たたき工法」は,昔から土間に多く使われている。修学院離宮の一二三石の土間として有名。版築系では,四日市の潮吹き築堤(重要文化財)がよく知られている。いずれも数百年の歴史を誇る。 主だった左官仕様となるものを紹介してきたが,当学院では基本的にはすべての仕様について訓練しているが,場所的にでき得ないものは組合員事業所の現場での体験学習や見学なのでホローしている。伝承技能においては向上訓練において実施している。2/2010 左官の仕様には多くの仕上げ方や工法があるが,そのいずれにおいても下地の見極めや材料の拵え方に経験が必要となる。 特に,土壁にはいろいろと伝承された技法があり竹小舞の掻き方,土の拵え方に経験を要する。土は新土だけでなく古土を混ぜ寝かす(ならす)こと,採取した土を水漉し(沈殿)して塗りやすく割れにくい粘度を調整するところに難しさがある。 割れ止めにはスサを混入するが,スサの種類も藁スサ,苧スサ,紙スサなどを用途に合せて荒いもの,細かいものを選んで使用する。紙スサなどは和紙から叩き出してつくるが,これらも学院では指導している。 更に重要なものに「左官鏝」がある。用途に合せてさまざまなものがあるが,左官の利点に展伸性があり,さまざまな形,継ぎ目のない壁が可能である。それもこれらの「鏝」と経験がなせる技である。454.3 左官工事に付帯するもの

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