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2.書き写しと説明い通訳者になることがあります。前回の訓練からの流れがわかるように,手話通訳者同士では訓練内容を伝言するための日誌を設けて,担当した手話通訳者が円滑に通訳業務ができるように活用しています。 いくら手話通訳の技術が高くても,聴覚障がいの生徒には,伝わりにくい話題があります。当科の聴覚障がい者は年齢が20代と30代で比較的若いために知らなかったのか,ベテランの講師が「丁稚」や「質屋」という話を訓練中に例え話に使うと,「丁稚」や「質屋」を理解できない状況になり,手話通訳者がその意味を説明しなければならなくなってしまいました。 世間では,なんとなく知っている言葉でも,手話通訳を介しての例え話や抽象的な話は伝わりにくい傾向があり,言葉だけの通訳(伝達)だけでなく,その言葉の意味までも通訳しなければならないケースが起こります。 その日,訓練する予定の詳しい内容を手話通訳者へ事前に伝える指導員や講師はあまりいません。当科では,平成22年4月度から,なるべくその日の訓練の草稿を通訳者に渡すことにしました。その結果,訓練の進行がストップしてしまうような質問が減り,訓練がスムーズに進むようになりました(なぜ,今まで渡していなかったかということを考えると,訓練が予定どおりに進行しなかったら恥ずかしいから,という気持ちが大きかったように思います)。たとえメモ程度でも,草稿を渡すことで,手話通訳者を最大限に生かし,聴覚障がいの生徒への訓練を円滑に進めていくことができると思います。 当校には,平成17年度(2005年)から改訂を重ねている「訓練指導上の留意点」というマニュアルがあります。1人ひとりの障がい状況に合わせた対応をするために,障がいの種類別の配慮事項がまとめられています。聴覚障がいの生徒用には,以下のような記述があります。2/2010------------------・板書をするときのポイント 板書をするとき,生徒が書き写している間は話し始めない。聴覚障がい者は「見ながら聞く」のでなく,目で話しを「聞く」のである。(「訓練指導上の留意点」より抜粋)------------------ 手話通訳者は生徒が手話を見られる状態かどうかを,指導員に注意を促してくれる存在でもあります。はじめのうちは,手話通訳者が「今,ノートをとっていますから説明を始めないでください」と,説明を中断するよう求めるシーンがしばしばでした。私の場合,(健常者に対する)以前の指導では,訓練で説明するときには,テキストを読ませながら口頭での説明を加えたり,板書を写している最中に次の説明を始めたり,ということが大半でした。しかし今回,聴覚障がいの生徒を意識して「板書しながら説明する」「板書を写させる」「テキストを読ませる」という3つの作業を明確に分けて行うと説明に時間がかかったので,説明する内容は要所要所を押さえることに心掛けるようにしました。また,視線の移動を少なくする工夫として,説明中にはテキストを使用せず,板書を主に使用してその訓練時間の最後に「本日の説明内容は教科書○ページでした」と示すようにとどめるという方法も現在試行しています。13写真1 パソコン室での手話通訳の様子    黒い服の女性が手話通訳者  

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