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1.手話通訳者と二人三脚で訓練特集 大阪障害者職業能力開発校では,平成8年度(1996年)より,聴覚障がいの生徒への訓練を円滑に行うため,手話通訳者が配置されています。手話通訳者には日常の教科および行事等の手話通訳を行う『専任手話通訳者』(3名)と,教科の手話通訳のみを行い本校で登録している『時間雇用の手話通訳者』(登録者15名)を配置して聴覚障がいの生徒への訓練におけるコミュニケーションサポートを行っています。 平成21年度に私は当校に赴任しました。定員20名の「製版アート科」を担当し,聴覚障がいの生徒が2名在席していたので,手話通訳者が配置されていました。もちろん手話通訳者とともに訓練を行うのは初めての経験でした。 訓練での手話通訳者は,ホワイトボードの近くに立って,指導員の発言を同時通訳します。聴覚障がいの生徒の座席は前方の手話通訳者に近い場所にしていますので,手話通訳者は聴覚障がい者が理解したかどうかを確認しながら手話通訳できます。したがって,当校では,自然に聴覚障がいの生徒が手話通訳者に質問しやすい環境となっています。手話がよくわからなかった場合,原因が講師の説明不足にあれば,質問が手話通訳者から講師にフィードバックされ,また,わかりにくい説明だと感じた手話通訳者が,自ら講師に直接質問することもあります。 手話通訳者にも得意・不得意の分野があり,手話12通訳者が訓練の内容を理解している場合は,手話通訳がスムーズです(手話は映像的な表現なので,形や状況を表す説明を加えることができるため)。まず手話通訳者が理解していると聴覚障がいの生徒への理解が進み,手話通訳者と講師は二人三脚で訓練をしています。 手話通訳者の配置については,各科の希望も配慮して専任手話通訳者が配置計画の作成を行い,時間雇用の手話通訳者の得意分野を反映するように工夫して作成しています。 例えば,当初,私の科では,「イラストレーター」(ソフトウェア操作法)の訓練について,テキストの流れに従った内容なので手話通訳をつけていませんでしたが,聴覚障がいの生徒の要望により,手話通訳の時間数が限られていることを説明したうえで,他の教科で手話通訳者がつく訓練の時間帯を変更して手話通訳者を配置するようにしました。その代わりに,比較的手話通訳が必要でない実習が多くなる「色彩構成」の訓練や「ワープロ」の訓練などは,聴覚障がいの生徒と相談を行い,すでに知っている内容が多いので手話通訳がなくても大丈夫との理由から通訳をつけず,検定の受検についての説明の日に手話通訳をつけるなど,聴覚障がいの生徒が要望する訓練に手話通訳者を配置するようにと調整しました。 訓練科目の専門知識を持った手話通訳者はまれで,手話通訳者も科目について勉強しながらの手話通訳になるケースも少なくありません。手話通訳の配置計画上やむを得ず,前回の訓練を担当していな技能と技術3大阪障害者職業能力開発校高島 智美特集障害者に対する職業能力開発の現状とその課題聴覚障がい者訓練における手話通訳の活用

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