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分けるのは困難な場合,初めは100通を何回も繰り返し行う。準備数は3,000通程度ある。宛先によっては,合併前の住所が記されていて,すぐには判断が難しいものもある。その場合は,すべての地域BOXに,左から5桁郵便番号が表示されているので,それを照合すればよいし,郵便番号簿も見ることができるので,どのBOXへ投入すればよいか必ず答えは出る仕組みになっている。作業の正確さや迅速さを図る基本的な訓練といってよいだろう。 平成19年度訓練生の1人は,訓練の成果をみる競技会で,この種目で一番速く正確にできた。就職試験では,18人受験して4人が二次選考に残り,実技試験をクリアしてみごと県内の市立図書館に就職を決めた。この訓練生が実技試験に挑む直前は,私自身が県立の図書館へ出向き,ブッカーかけなどの技術を図書館の職員から教えて貰い,試験準備訓練として図書抜き出しと返却,図書にブッカーをかける特別訓練に励んだ。実際に試験に出されたのは,図書の返却作業だった。合格通知を貰った後の訓練生の談話から,「メール便の仕分け」の身体動作を思い出して頑張ったという報告があった。この訓練生は図書館を受験する以前に物流関係で職場実習を実施していたので,これだけを合格の要因とはいえないが,さまざまな基本訓練と専門訓練の積み重ねが訓練生のやる気を育て,就労への士気を高めていったと予測できる。ケース④ 訓練のなかでは,特に作業手順を図や写真入りで作業場に貼り付けておくと,視覚に訴えるので作業がスムーズに運ぶという結果がうまれることになる。このやり方での成功例の1つに,発達障害を伴うと思われる訓練生が,封筒にロゴ印刷を行うときに輪転機近くの壁に,作業手順1から9までを写真入りで表示した。訓練生は,それを見て指差しながら作業を進めて,ひと項目ごとに「よし!」とつぶやきながら確認を行っていた。毎日2,000枚程度の封筒に専門校のロゴ印刷を実施した。訓練生は,インクやマスターがなくなるとき以外は,ほとんど難なく作業を行い正確な結果を残した。2/2010ケース⑤ 悪天候に気持ちが反応して作業の手が止まる訓練生の場合は,なるべく外の天候が気にならない場所を提供するように努めた。 また天気だけでなく,作業手順が複雑だったり,作業がはかどらない場合は,気持ちが沈みがちになるので,苛立ちを覚えたり涙が出てきたりする。訓練現場とは別の場所(相談室など)で気持ちが落ち着くまで椅子にかけて待機するように勧めた。気持ちが落ち着いた時点で訓練生は,「続きをやります」と言って作業場所に戻ってきた。作業の手順を再度確認して作業を続けることができた。 この訓練生は,合同面接会に同行したときのこと,緊張のあまり面接官から聞かれていないことを喋ったり,会場外で向けられたメディアのマイクに思わず応えていたりする場面が見受けられた。しかし,体験実習先の事業所では,実に迅速にデータ入力をこなしてミスもないという高い評価をいただいた。落ち着ける場所で得意な仕事内容に集中できたに違いない。実習先からは,掃除のやり方がわからないとの連絡があり,以後の訓練では雑巾の絞り方や机の拭き方を学ぶこととなった。就職は2回目に行った実習先事業所で,個人情報などのデータ入力の仕事で採用された。ケース⑥ 作業内容が理解しがたい場合は,フローチャートシート(国立リハビリテーションセンターの訓練内容を参考にした)に書けば何回もそれを確認できる9

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