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5.2 キャラクター商品の模倣に対する予防策来栄えを見れば,金型が流れて作られた物なのか,真正品から型をとって作った物なのか判断できる。筆者も模倣品とわからず購入した経験があり,その模倣品のほとんどが真正品から型をとって作った物と考えられる。図3に示すノートもその模倣品の1つであり,模倣品は,パッケージの絵や写真等は真正品の物とほぼ同じだが,社名,版権元の名前,著作権表示等はすべて外されている。社名や製品名を,真正品の物と全く別の名称にすれば商標権侵害になりにくくなっている。 模倣品の生産は中国南部が中心であり,流通されるのは中国(特に広州のおもちゃの問屋街),東南アジア,韓国,香港,台湾,北米,欧州である。被害額は算定不可能ともいわれている。玩具はライフサイクルが短い商品であることから,香港か日本で流行っている製品を入手して,中国の業者に製造の発注を行っていると考えられる。なお,当該商品のブームが収束すると同時に模倣品も収束する。 日本で製造している真正品は,日本から港に出し,香港から中国大陸や東南アジアへ再輸出されているが,中国で製造された模倣品も香港経由で東南アジア各国へ流れている。中国での模倣品製造は分業して行われているため,工場摘発の場合も,パッケージしか見つからないこともある。キャラクター商品は,各社とも作っている内容が異なるので,共同して摘発することは難しいが,知的財産の権利が著しく侵害されているため,放置するわけにはいかない重要な問題である(10)。 模倣品に対する予防策として特許庁や経済産業省(11)の対策方法からまとめると,①権利化,②商標登録,③意匠登録,④著作権,⑤商標登録の意匠登録も著作権もない場合,⑥物理的対策,⑦組織体制などに分類できる。 ①権利化…キャラクター商品(玩具)はライフサイクルが非常に短いので,権利となるまで時間とコストがかかり,かつ,摘発に技術的な説明を要するため,権利化の手段である特許は使い38にくい。また,毎年多くのキャラクター商品が世に送り出されるので,商品の幅も広くすべての商品に対して権利の設定・摘発などの対策を講ずることができない。 ②商標登録…指定商品(商標登録時に商標を使用する商品として指定されたもの)に当たるか,または指定商品に類似する場合,その製品が輸入されていれば,輸入差止めの申立てをすることにより,その製品の輸入を止めることが可能である。また,輸入されていない場合でも,裁判によって,そのキャラクターの使用禁止や無断使用製品の廃棄などを求めることができる。そして,ライセンス料相当額など自己が受けた損害額の支払を求めることができる。   さらに,裁判で判決が出るまでの期間に,その製品が大量に出回ることなどによって,商標登録者に多大な不利益が生じる場合には,仮処分によって,キャラクターの使用禁止などを求めることができる。 ③意匠登録…商標権における対抗策と同じである。   なお,意匠の場合,同じか類似するデザインであっても,登録意匠と同一または類似品(例えば食器類であること,文房具等であること)でなければ,対抗策をとることができないので注意が必要である。 ④著作権…著作権に基づいての対抗策をとることができる。 ⑤商標登録も意匠登録も著作権もない場合…キャラクターが権利者の商品の出所を表示するものとして商品において使用されており,それが著名または周知といえる状態にまでなっている場合には,不正競争防止法違反として,そのキャラクターの使用禁止や無断使用製品の廃棄などを行わせることができる。そして,ライセンス料相当額などの権利者の損害の賠償を求めるこ技能と技術

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