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4.今後の課題なく使用する機材の保守点検を行う「装置保全」等の支援作業員の育成も別途必要となっている。 サンプリング作業に係る「技能」の計画的OJTを運営する教育システムの構成は,5つに分類したコアな各技術分野(表3中の「調査実作業」にある環境大気~/排ガス~/水質/土壌/作業環境~の5つ)の中堅技能者の中より数名の指導者を選出し,訓練対象者と組み合わせて一時的な「テクニカルユニット」を組み,6ヵ月を1つの期間として集中してその技術分野に関連する業務にお互いに携わることにより教育訓練を続け,師弟関係の構築等の効果的な実施がされるよう配慮している。 この計画的OJTのユニットでは標準作業手順書(SOPs)のような形式知では書き表せないコツや勘などの多くの「暗黙知」を指導者より積極的に学び取り,単なる業務の引継ぎに終わらないよう促している。 さらに選出された指導者に対しては,事前に4段階指導法をはじめとする指導の仕方のスキルや心構え,ほめ方・叱り方を学習させるとともに,指導を通じて自らの技術を見つめ直して,その技術に対する深化を図ることも期待しており,指導者も別の意味では教育の対象となっている。 教育訓練の運営の主体は教育専任職の教育主管が行い,進捗については教育主管が定期的に指導者・訓練対象者双方と面接を行い,不足箇所の確認やフォローとキャリア形成の支援を行っている。また教育訓練を行った成果については指導者・訓練対象者共に業績考課の評価対象とし,その指導・習得の成果を賞与等にて酬いられるように人事システムとの連動にも配慮している。 5つのコアな各技術分野の中より一例として「土壌」にかかわる「サブ」レベルの「技術評価シート」を表4に示す(この作業担当者としてのサブの上位レベルにはさらに土壌調査の個別サイト責任者としての「ヘッド」が設定され,大きく2段階となっている)。この技術評価シートは熟練技術者からのヒアリングにより業務の棚卸を行って作成したもので,一連の「計画~段取り~実施・点検~かたづけ~事後処理~データ整理」等の作業全体を含んでい24る。 「技術」については従来から実施している自己啓発による資格取得等の自ら行うキャリア形成の支援に加えて,インターネットによるe-ラーニング5)を活用したセルフジョブトレーニング(self-JT)も知識を得るために設定した自主学習時間の枠内に取り入れて効果的に学習できるようにしている。 一方,教育訓練実施後のスキル評価としては,ASTMD58296)に示された教育・訓練プログラムの標準指針を参考として, ①「基礎知識とSOPsに関する筆記試験」 ②「現場作業の最終観察」(表4を評価に使用) ③「トラブルシューティングに関する口頭試験」の3つのカテゴリーにて評価判定を行い,3つすべてに合格して「サブ」や「ヘッド」レベルの取得としている。 技能・技術以外の2つのスキル(ヒューマンスキルとビジネスマインド)評価の判定パラメーターには,前述の職業能力評価基準3)に加えて,社会人基礎力7)やジョブカード制度8)に示されている能力基準を各細目毎に取り入れて評価のための能力ユニットシートを作成し,活用している。 一連の教育訓練のシステムの構築は完了したが,今後ブラッシュアップして次のような問題点を解決し効果が上がるようにしていかなければならない。 ① 技能・技術について,実際の調査業務によるOJTの中では訪問した顧客先にてサンプリングの失敗を経験させるわけにはいかないため,必ずしも百戦錬磨の頑強な技術者に育っているとは限らず,失敗を机上だけではなく体験させて感受性を高めるツール作りを一連のOJTとは別に設定し,失敗した後に考えて答えを見つけることができる能力を育成する必要がある。 ② ヒューマンスキルはマンツーマンで先輩職員と直接触れ合うことで学び取っているが,その習得度には個人差があり,さまざまなタイプの先輩職員とリレーションシップを図り,人間性技能と技術

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