3/2009
20/48

3.ISO9001が従業員の能力開発に及ぼす影響へと,1年の間に急激に伸びている。 ISO9001は,製品そのものについての規格ではなく,製品を作り出すプロセスに焦点を当てて,企業(組織)が,顧客の要求を満足する製品やサービスを継続的に供給するための,品質マネジメントシステムについての要求事項を規定したものである。そして,この中には,従業員の能力開発に影響を及ぼす要求事項も含まれている。 例えば,人的資源の「力量,認識及び教育・訓練」の項で,組織は,次の事項を実施することと規定している。① 製品品質に影響がある仕事に従事する要員に必要な力量を明確にする(製品品質に影響がある仕事を選び出し,その仕事を進める上で必要な能力を明確にする)。② 必要な力量がもてるように教育・訓練し,又は他の処置をとる。③ 教育・訓練又は他の処置の有効性を評価する(教育・訓練の結果,個々の従業員が必要な能力を保有しているかどうかを評価する)。④ 組織の要員が,自らの活動のもつ意味と重要性を認識し,品質目標の達成に向けて自らどのように貢献できるかを認識すること確実にする。⑤ 教育,訓練,技能及び経験について該当する記録を維持する(教育・訓練等の履歴表を作成し,管理する)。 とりわけ,①については,職場ではどのような仕事が行われていて,だれがどの仕事を担当し,そのレベルはどの程度のものであるかを明らかにすることを求めている。そのため,職務分析を行い,作業者ごとに作業内容とそのレベル(少しの指示で作業ができるレベル,標準作業ができるレベル,異常処理ができるレベル,作業指導できるレベル等)を明らかにしなければならない。これらの内容(作業者名,作業名,作業者の作業遂行能力のレベル)を一覧表まとめたものは,スキルマップ,星取り表(トヨタ生産方式)等と呼ばれているものである。18 スキルマップ等を作ることによって,個々の従業員の実際の作業遂行能力のレベルと当該作業を遂行するために必要な能力とのギャップが明確になる。その結果,教育訓練で付加すべき内容,要員数,期間等,教育訓練の必要点を把握することができる。 ②および③については,教育訓練の仕組みに言及している項目である。これらの要求事項は,業務遂行に必要な訓練項目を精選し,訓練を実施し,責任者が訓練後の力量を認定し,もし,訓練受講後も作業ミス等を出すような状態である場合は,再度,訓練を実施するような手順を組み入れた仕組みを作ることを示唆している。 ①から⑤の要求事項は,製品品質に影響するそれぞれの仕事(業務)を遂行するうえで必要な知識・技能を明確にして,教育訓練の全容を把握したうえで人材育成を計画的に,かつ体系的に進めることの重要性を示している。 したがって,ISO9001の認証を取得するためには,イ従業員の教育訓練は,①から⑤の要求事項をクリアできるようなものでなければならないこと,ロこれらの内容は短期間に達成できるものではなく,日常的に地道な職場での取り組みが必要であること,ハ組織として教育訓練の管理・運営が欠かせないこと等が基本的に求められる。 次に,教育訓練を効果的に進める際に大切な作業標準書や作業手順書等の訓練ツールの作成に関する規定について見てみる。 「文書化に関する要求事項」として,品質マネジメントシステムの文書には,次の事項を含めることと規定している。⒜ 文書化した,品質方針及び品質目標の表明⒝ 品質マニュアル⒞ この規格が要求する“文書化された手順”⒟ 組織内のプロセスの効果的な計画,運用及び管理を確実に実施するために,組織が必要と判断した文書⒠ この規格が要求する記録 ここでは,とりわけ品質方針や品質目標を定め,品質に関して組織を指揮し,管理するためのマネジメントシステムを規定する品質マニュアルの作成が技能と技術

元のページ  ../index.html#20

このブックを見る