図7 作業中の瞬時心拍の変動パターン<参考文献>近年急速な進歩を見せている「ウエアラブルデバイス」を活用した瞬時心拍計測を技能習得に生かすことを考え,作業者が感じる作業の難易度と瞬時心拍変化の関係について実験的に調べた。ウエアラブルデバイスによる瞬時心拍計測においても,従来法と同様に,拍数は作業の難易度とほぼ比例的に対応して変化し,作業の困難度が高い場合には作業中高い心拍を維持し続け,慣れた作業のように困難度が低い場合には作業の初期段階で高い心拍を示した後急激に減少していく傾向が見られた。一方,簡単な会話や作業指示書の黙読など作業者にとって精神的な負担が小さい作業では瞬時心拍変化に個人差が強く現れ,このような作業における難易度を瞬時心拍から評価することは困難であった。穴加工において作業者が感じている難易度は,作業者が最も難しいと評価した作業における平均心拍および変動係数の平均値を原点としたときに,ある作業における平均心拍と変動係数の関係が原点に対してどのように分布するかを分析することで指標化できる可能性がある。このような指標と作業中の瞬時心拍変化のパターンを組み合わせると,ウエアラブルデバイスによって作業の難易度に加えて作業者の慣れ(内面の変化)をも反映した評価が期待でき,技能習得の速度を高めるための訓練プログラム等の設計に役立つものと考えられる。-16-(1)古川康一,上野 研,五十嵐 創,森田想平:身体知の解明を目指して,第17回人工知能学会講演会予稿集,p.1-4,(2003).(2)馬渡正道,土屋健介:高度熟練技能における数理解析モデルおよび制御解析法の構築ならびに書道の運筆活動における潤渇への影響,計測自動制御学会論文集,53,p.317-329,(2016).(3)Beilock,S.L.andCarr,T.H.:OntheFragilityofSkilledPerformance:WhatGovernsChoking,J.ofExperimentalPsychology,General,130p.701-725,(2001).(4)Ofen,N.,Moran,A.andSagi,D.:EffectofTrialRepetitiononTextureDiscrimination,VisionReserach,47,p.1097-1102,(2007).(5)Mysezeski,J.M.:MathematicalModeloftheOccurrenceofHumanErrorinManufacturingProcesses,QualityandReliabilityEngineeringInternational,229,p.1-6,(2017).(6)近藤康雄:工作技能の継承に向けたノウハウのデジタル化,技能と技術,54,p.16-22,(2019).(7)近藤康雄:切断作業にける作業者特性のデジタル化,技能と技術,55,p.20-27,(2020).(8)古川勇二,池田知純,岡部真幸,菅野恒雄,寺内美奈,二宮敬一,繁昌孝二,不破輝彦,和田正毅:身体的認知科学に基づくフライス加工技術の習得・伝承モデルの構築,第1報 全体構想と予測される効果,2,014年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集,p.1041-1042,(2014).(9)例えば,古谷野英一:心拍の平均値と変動係数との有用性の比較,日本経営工学会誌,31,p.175-180,(1980).(10)藤原幸一:ヘルスモニタリングのための心拍変動解析,システム/制御/情報,vol.61,p.381-386,(2017).(11)松尾周汰,荒川 豊,吉田繁也:継続的なストレスチェックを実現するためのスマートウオッチアプリケーションの設計と実装,第82回情報処理学会講演論文集,p.3-299-3-300,(2020).(12)球仁郷 誠:マハラノビスの距離入門,品質工学,vol.9,p.13-21,(2001).(13)例えば,石橋富和,大谷 璋,三浦武夫:精神負担の指標としての心拍数,産業医学,vol.10,p.377-379,(1968).5.まとめ
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