タッチタイピングメソッドは,次の3点に着目して検討する。1.タッチタイピングに必要な練習の洗い出し2.入力練習で使う文章の特性の調査3.対象となる訓練生のタイピングの傾向の調査これまでのタッチタイピングの訓練を通じて,習得に必要な練習は「1.指の準備運動としての練習」,「2.キー配置を習得するための練習」の2つに分けられる。2.1 指の準備運動としての練習キーボード操作は,決められた打鍵範囲のキー位置に指を滑らかに動かせるようにするための練習が必要である。これは,ピアノのバイエルのように,主にピアノを弾くための指の運動を目的とした曲で練習するのと同じように,パソコンへの滑らかなキーボード操作のための指の運動を目的とした練習である。ピアノの場合,バイエルを通じて,ピアノを弾くために必要な基本的な指の使い方や動かし方を習得していく。タッチタイピングメソッドにおいても,決められた位置に指を動かすために,ピアノの練習と同様にキー配置を習得し,できるだけ指を多く動かし,手を広げて練習する必要がある。指の準備運動では,ストレッチングのような筋を伸ばすことによる,関節可動域の改善や筋の増長[1][2] を目的としない。手関節や手指の筋に関わるストレッチング[3]もあるが,キーボード操作の範囲で実施できる練習を準備運動として行う。2.2 キー配置を習得するための練習キー配置を習得するために4つの練習方法を検討している。2.2.1 アルファベットAからZの入力練習タッチタイピングの入力練習では,ローマ字入力による文章入力ができるようになるために,Aから-17-Zまでのキーがキーボードのどこに配置されているかを習得することが必須である。したがって,AからZまでのアルファベットをさまざまな組み合わせで,ひたすら入力する練習方法がある。2.2.2 単語とフレーズの入力練習ローマ字入力のkasaの「傘」,soraの「空」,kaisyaの「会社」のような単語,kasawowasuremasitaの「傘を忘れました」のようなフレーズを入力練習することで,キー配置および単語とフレーズを習得することが効率的に進むと考える。このように単語とフレーズの入力練習は,キー配置および単語とフレーズを同時に習得する指の運び方の練習となる。2.2.3 文字変換のための入力練習文章入力では,ローマ字の入力だけでなく,ローマ字で入力したひらがな文字を,必要に応じて漢字やカタカナなどに変換する操作がある。その操作は,文節単位の変換を行ったり,変換する範囲を調整したり,再変換したりする。これらの操作にかかる時間をできるだけ最小限にするために,スペースキー,矢印キー,シフトキーおよびファンクションキーなどの制御キーの機能を学ぶ必要がある。また,これら制御キーも滑らかに打鍵できなければならない。そのために,制御キーの機能や制御キーの配置を習得するための練習が必要である。2.2.4 ショートカットキーの入力練習文章作成には,文章入力以外にも文字の装飾やページレイアウトなどさまざまな編集作業が含まれる。これらは,キーボードまたはマウスにより操作される。上肢に障害のある訓練生は,マウスに手を添えることやマウスポインタの位置調整に時間を要するなど,パソコン操作におけるキーボードとマウスの併用が難しい場合がある。マウス操作をキーボード操作に置き換えることで,作業時間の短縮につながる。パソコンのOSやソフトウェアには作業時間の短縮につながるさまざまなキーボードのショートカットキーが用意[4]されている。ショートカットキーの一例を表1に示す。2.タッチタイピングに必要な練習
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