職業能力開発総合大学校技能五輪全国大会「電子機器組立て」職種競技主査 花山 英治スマートフォンに代表されるIT端末,薄型テレビなどの家電製品,コンピュータ,ロボット,自動車など,小型・軽量化,高性能・多機能化が進む工業製品の多くに電子機器が搭載されている。電子機器は,集積回路(IC)やトランジスタ,抵抗器,キャパシタ,マイクロプロセッサなど,さまざまな電子部品をプリント配線板に実装した電子回路を中心に構成されている。これらの高度な電子機器に関わる現在の技術者は,単に仕様にしたがって電子機器を「組み立てる」技能を有するだけでは十分とはいえない。要求される仕様から「もの」を具現化するために必要なハードウェア,およびソフトウェアに関する幅広い知識と卓越した技能が,製造業をはじめとする「ものづくり」現場から求められている。このような状況のもと,技能五輪全国大会「電子機器組立て」職種では,いち早く,その時代に求められる技能,および国際的に通用する技能を醸成することを目指して,競技を実施してきたところである。本稿では,技能五輪全国大会(以後,「全国大会」という。)「電子機器組立て」職種に新規に参加を予定している,あるいは,すでに参加している企業,学校の選手の参考として,また,本職種の啓蒙の一環として,競技内容,競技課題,競技運営などについて概説する。-27-2.1 競技課題の変遷「電子機器組立て」職種の競技課題は,1997年第35回大会までは,電子機器をいかに早く,正確に,見栄えよく組み立てる技能を競う内容が中心であった。しかし,この頃から技能五輪国際大会(以後,「国際大会」という。)での成績が振るわなくなってきたほか,電機メーカの参加撤退,製造業における生産現場の海外移転による人材育成の方針転換など,本職種を取り巻く環境が変化してきた時期であった。このような状況に対応するために,本職種では国際大会で実施している課題要素の取り入れ,時代の変化に対応した電子技術者の人材育成に資するよう新たな競技課題の導入を行ってきた。競技課題の主な変遷を表1に示す。1998年第36回大会では測定課題,修理課題を導入,2001年第39回大会では試作課題を導入した。2006年第44回大会では,国際大会で使用している統合型電子CADを採用し,基板設計課題,プログラム設計課題を導入し,現在行っている競技形態が完成した。その後も,国際大会では実施していない技術計算課題の廃止(2013年第51回大会),公開課題としていた専用基板の組立て課題の廃止(2015年第53回大会)などを経て,現在に至っている。専用基板の組立て課題の廃止の理由は,地方予選で技能検定「電子機器組立て」2級実技課題による選考を実施しているため,出場選手は一定以1.はじめに連載企画:職業大と技能五輪 第2回2.競技内容「電子機器組立て」職種の競技紹介技能五輪全国大会
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