1.はじめに最近の障害 者雇用の状況 近年,様々な就労支援や雇用促進の制度政策とともに障害のある人の労働分野での社会参加が進んでいる。その背景にはノーマライゼーション*1やILOの障害者の職業リハビリテーション及び雇用に関する条約*2,企業のコンプライアンスやCSRなどがある。今後も法定雇用率の改正(平成30年の精神障害者の雇用義務化)や障害者総合支援法*3での就労支援機能の強化,障害者権利条約の批准のための労働分野での合理的配慮*4など積極的な展開が見込まれる。就労支援のニーズとその課題 障害のある人の就労に関係する主な機関としては公共職業安定所の専門援助の窓口や,地域障害者職 業センターなどがある。さらに地域での就労支援の拠点としての障害者就業・生活支援センター(国制度)や自治体が独自に設置した就労支援センター等の就労支援機関,また一定期間の訓練を行う就労移行支援事業所などが身近な地域で支援を担っている。 障害者雇用促進は身体障害者から始まり知的障害者へと広がり,最近では精神障害者や発達障害者,高次脳機能障害,難病,リワーク支援などその支援の対象領域は多様化している。特に就労支援の現場では,精神障害と発達障害のある支援対象者が急増している実感がある。就労支援が進むなかで,働く技能と技術 2/2014訓練から支援を受けながら働くへ これまでの障害のある人の就労支援は職業リハビリテーションの分野で展開されてきた。まず評価を受け,そして働くために必要な訓練を受けてから仕事に就くという考え方である。しかしこのやり方の場合,一部の人しか職業にアクセスできないことにもなりかねない。近年では,職場で働きながら訓練を受けたり,支援や配慮を受けなら働くことが有効とされ,就労支援員やジョブコーチ*5が就職活動や職場定着をコーディネートしたり,周囲の従業員が職場で就労をサポートするようになってきた。このような考え方の転換は,より多くの障害のある人を労働分野で活躍できるようにした。 一方でこの方法は企業の障害者雇用における雇用管理のレベルアップを求めるものであり,別の言い方をすれば障害のある人を職場で育てるモデルであるともいえる。企業では障害ごとの様々な配慮,職域,そして多様なキャリアに応えるために現在模索中といえるかもしれない。その中において徐々に優れた雇用管理で障害のある人を戦力にまで高める企業もみられる。労働に付加価値を積み上げるのは本来企業の持つダイナミズムでもあり,日本の優れた人事制度や現場の持つ力の活用など,今後に大いに側の準備性の問題,就職した人の定着率の問題や雇用管理の課題,支援する側の専門性の問題なども次第に明らかになっている。これまでの支援の経験からそのあり方について整理したい。NPO法人日本就労支援センター大形 利裕-4-2.キャリア支援の重要性 障害者に対する職業訓練障害者就労支援機関での実践から1―本人を主体としたキャリアカウンセリング―
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