裏づける技能,視野・知識の広さ,人間性である。指導員に必要な能力を「指導力」でみると,① 選手を「やる気」にさせる動機づけができる② 選手の能力に合った育成計画の立案ができる③ 選手に合った精神面での指導ができることが必要である。 また,「技能」でみると,① 高い技能を有し,具体的に技能伝承ができる② 訓練のなかでの変化点から工具・刃具の改善・加工技法の開発ができる③ ベストな作業工程が立案できること があげられる。 そして,上記に加え,指導員として選手を育てあげるという「熱い情熱」で常に指導に当たる姿勢が大切であると考えている。 技能五輪修了者の選手時代に培った技能は「高度な技能」とは言っても,現場サイドから見れば幅は狭く基礎的な技能にすぎない。修了生は,技能五輪で培った技能を「基礎」として,配属職場である新製品を生産する設備製作を行う工機部や,製品開発に対する具現化を図る試作部などで,さらに高い技能を磨き開発性の高いものづくりに取り組み,高度熟練技能者として活躍している。例えば,抜き型職種の修了生は,インジェクタの開発・生産で,技術者と共に0.05mmの微細孔用パンチを開発し,インジェクタ噴孔プレート加工を開発している。さらに,旋盤職種の修了生は,第1回ものづくり日本大-26-〔1〕 中央職業能力開発協会ホームページ賞を受賞した,世界初となる微細穴加工を必要とするエジェクターサイクルの開発・実用化を成功に導くなど,幅広く製品開発の具現化に貢献している。 デンソーは,1963年に第1回技能五輪全国大会に参加して以来,600名を超える修了生を輩出し,職場のコア人材として,先輩が築いたものづくり技能を伝承し,さらに卓越した技能に発展させ,職場の第一線で当社のものづくりの発展に寄与している。確実に技能伝承を図っていくには,技能を伝承する人とされる人が必要である。言ってみれば,技能伝承は技能のたすきリレーのようなものである。技能を伝承する人とされる人が存在する技能五輪での人材育成を今後も継続的に実施していくことが,技能伝承に不可欠であり,かつ,企業発展には欠かすことのできないものであると考える。 以上,デンソーの技能五輪選手育成の取り組みを中心に紹介した。環境変化,職場のニーズにより訓練職種の拡充,あるいは,縮小を図った時代があったわけだが,人材育成を継続的に進めてきた結果,現在も修了者が技能やデンソースピリットの伝承者として各職場で重要なポジションを占め活躍している。今後も継続的に取り組みを進めていくことが,当社の人材育成となり,ものづくりの力を継続に向上させていくことになると考える。<参考文献>5.4 技能五輪修了者の活躍図6 五輪選手育成ステップ技能と技術 2/20146.企業における技能伝承の必要性7.終わりに
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