⑵ 事業所との打ち合わせ 指導員が事業所を訪問し,職務内容の説明を受けました。その後Bさんに関する障害特性や配慮事項の説明を行いました。説明の内容については事前にBさんと検討しました。 打ち合わせにおいてBさんの職歴や今後の訓練で技能習得が見込める職務として,CADを使用した手描き機械図面のトレース,入力業務,ファイリング作業等が見いだされました。Bさんは新しい環境に慣れるまでに時間がかかることや,複数のことを同時に作業しようとすると混乱してしまいミスを起こしやすくなるといった特性があることを踏まえ,1回目の実習では図面のトレースのみにしていただくように依頼しました。 Bさんとともに事業所を訪問し,具体的な企業内訓練の日程や内容について打ち合わせを行いました。もともと疲れやすいという特性があり,そのうえ慣れない環境・作業に加え,通勤に時間がかかることで負荷が増えることなどを勘案し,企業内訓練は午前中のみで3週間実施することとなりました。Bさんは,職務内容に対応できるかどうかの不安は感じていましたが,作業は事前に調整した内容で行えることとなり,作業環境や時間,指導体制も確認できたことで,安心した様子が窺われました。⑶ 施設内での事前訓練 事業所で使用しているCADは初めて使用するソフトだったため,CADの操作方法や事業所で使用-19-⑸ 施設内での補完訓練 補完訓練の実施に当たっては,事前に課題の確認や対応方法の相談・検討をBさんと行ったうえで実施しました。 体力面については,毎日訓練時間終了後,1時間程度残って自習訓練を行うことでフルタイム勤務に対応できる耐性を作っていくこととしました。また,1回目の企業内訓練では,集中すると休憩を取ることを忘れてしまうことがあったため,図8に示すようなパソコンのタイマー機能を使用し,疲労のされている機械部品図面の描き方に特化した事前訓練を実施しました。 Bさんは,疲労が溜まると細かい文字が見えにくくなるため,CADトレースに不安を感じることがありました。このため紙の資料を見るときにはルーペの活用,パソコン作業では解像度の変更や画面の文字と色のコントラストの調整,拡大鏡機能の利用といった補完手段を提案し,自分に合った環境を作っていくことで不安を解消していきました。⑷ 1回目の企業内訓練の実施 企業内訓練の初日は指導員が同行し,再度事業所担当者の紹介,職場内の案内,仕事内容の説明をしていただき,その後実際の作業の様子を見学しました。実際の作業に入る前に,事業所担当者に対し,Bさん自身から改めて障害について説明を行いました。その後,事業所の了解を得たうえで,Bさんが作業しやすいように,施設内訓練で行っている作業環境に近い環境に変更しました。 毎日のメールでの作業報告と週に1回事業所への訪問を行うなかで,Bさん自身から技能的な面がまだまだ足りていないことに対する不安を聞き取りました。一方事業所側からは技能的な面では特段の課題の指摘はありませんでしたが,体力的な面でフルタイム勤務になった場合の耐性に不安を感じていることがわかりました。 Bさんが感じた技能面について,また事業所が感じた体力面について施設内で補完訓練を行い,再度企業内訓練を実施することとなりました。障害者に対する職業訓練3図7 パソコン環境の設定
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